化粧品やスキンケアの基本ともいえる「保湿成分」。
ヒアルロン酸やコラーゲン、セラミドなど、誰もが1度は耳にしたことがあるはずです。
ただ、それぞれの保湿成分がどんな効果があるのか知っていますか?
自分にとって本当に効果のある化粧品を選ぶには、保湿成分の違いや役割を理解していると便利です。
そこでこの記事では、代表的な保湿成分の種類と特徴をくわしく解説。
あわせて肌質肌悩み別のおすすめ保湿成分も紹介しています。
どの保湿成分を選べばいいのかわからないという方は、ぜひ参考にしてみてください。
本記事内における注釈の解説
※1 浸透:角質層まで。
※2 エイジングケア:年齢に応じたお手入れ。
※3 美白:メラニンの生成を抑えシミそばかすを防ぐ。
Contents
保湿成分とは?肌のうるおいを守るアイテム
保湿成分とは、肌にうるおいをあたえて乾燥を防ぐ成分のことです。
そもそも肌が健康な状態をキープするのに欠かせないのが、バリア機能。
肌表面の水分と油分のバランスを取ることで、紫外線やほこりなどの外部刺激から肌内部を守る仕組みです。
さらに肌にうるおいを保つことで、ターンオーバーを整える役割もあります。
(参考:肌荒れの原因は「ターンオーバーの乱れ」かも!意味や周期、肌を整えるおすすめケアを解説)
逆に肌が水分不足になるとバリア機能が乱れ、ニキビやシミ、シワ、くすみといった肌トラブルを招きかねません。
つまり、美肌を保つには「スキンケアで保湿成分を取り入れ、水分を補う必要がある」ということです。
ただし、一口に保湿成分といっても種類によって効果や働きが異なります。
分類 | 働きと特徴 | 成分例 |
水分を そそぐ | 角質層に水分を届ける | 精製水 |
水分を つかむ | 水分を引き寄せる →湿度が低いと保湿力も下がる | グリセリン |
水分を かかえこむ | 角質層内の水分を保つ →湿度が低くても保湿力がある | ヒアルロン酸 コラーゲン |
水分を はさみこむ | 水分保持力を高めてバリア機能を整える →高い保湿力をキープする | セラミド レシチン スフィンゴ脂質 |
水分に フタをする | 水分を逃さずに閉じ込める | スクワラン ホホバオイル ワセリン |
効果的な保湿ケアをするには、複数の保湿成分を組み合わせて取り入れることがポイントです。
「保湿化粧品を塗っても肌の奥まで届かないから意味がない」という意見もありますが、これは間違い。
たしかに化粧品で補える保湿成分が届くのは、あくまでも「肌の表面(角層)まで」です。
化粧品に配合される保湿成分が、肌の奥(真皮層)に作用する効果は期待できません。
ただ先述の通り、美肌を保つには肌表面の水分や油分を補うことが重要。
化粧品を使うことで、うるおいの膜で肌表面を保護し、肌のバリア機能を守ることに繋がります。
美肌を保つには、しっかりと肌表面をケアすることが大切といえるでしょう。
肌のうるおいは「皮脂/NMF(天然保湿因子)/細胞間脂質」の3つで構成
肌のうるおいは、皮脂、NMF(天然保湿因子)、細胞間脂質の保湿因子で保たれています。
保湿因子 | おもな役割 | 構成成分と比率 |
皮脂 | 肌表面の保護/水分蒸散の防止 |
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NMF (天然保湿因子) | 水分保持 |
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細胞間脂質 | バリア機能/水分保持 |
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(参照:化粧品成分オンライン)
肌に水分を閉じ込めるために肌表面(角層)にもともと備わっている、天然の保湿成分というわけです。
ただしこれらの保湿因子は、日常生活の中で減少してしまいます。
- 環境による肌の乾燥
(秋冬の空気が乾燥する季節、長時間紫外線を浴びるなど) - 間違ったスキンケア
(1日に何度も洗顔する、熱すぎるお湯で洗い流すなど) - 不規則な生活習慣によるターンオーバーの乱れ
(極端な食事制限ダイエット、睡眠不足、心身の過度なストレスなど) - 加齢
たとえば1日に何度も洗顔していると、NMFが洗い流されて肌表面の水分が蒸発し、肌の乾燥を招く原因になります。
とはいえ、保湿因子を構成する成分は「化粧品によく配合されている成分」です。
皮脂の約4分の1を占めるワックスエステルはホホバオイルの主成分。
NMFは16種類のアミノ酸、細胞間脂質ではセラミドが大部分を占めています。
効率的に保湿ケアをするなら、保湿因子の構成成分に近い保湿成分や油分を取り入れるといいでしょう。
【保湿成分一覧】代表的な保湿成分6つの効果をチェック!
ここからは代表的な保湿成分の効果やはたらきについて解説します。
下記の6種類はすべて、もともと私たちの肌に存在する成分。
刺激になりにくいので、肌質に関わらず使いやすいでしょう。
保湿ケア商品に配合されることが多いので、チェックしてみてください。
アミノ酸
アミノ酸は、浸透力※1に優れ肌にうるおいをあたえる保湿成分です。
NMF(天然保湿因子)を構成する成分の1つで、肌の水分保持の効果があります。
コラーゲンの原料であり、大きさはなんとコラーゲンの約3000分の1。
その小ささから、角質層の隅々まで浸透してスポンジのように水分を吸収し、肌にうるおいをあたえます。
成分名 | 成分表示例 |
アミノ酸 | 【NMF(天然保湿因子)に含まれているもの】
【その他】
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アミノ酸が配合された化粧品は、スキンケアの導入にぴったり。
特に保湿力の高いセリン、グリシンは乾燥しやすい方におすすめです。
また、アミノ酸配合の化粧品は、みずみずしいローションタイプのものが多いのが特徴。
さっぱりとした使用感なので、ベタベタしたテクスチャーが苦手な方でも使いやすいでしょう。
さらに比較的安価な商品が多いので、コスパを求める方もチェックしてみてください。
アミノ酸と似た働きを持つ保湿成分として、グリセリンが挙げられます。
体内にも中性脂肪として存在する成分で、刺激性がほとんどないのが特徴です。
アミノ酸よりもややしっとりした使用感が期待できます。
肌の乾燥が気になる方は、アミノ酸と合わせてチェックしてみてください。
ヒアルロン酸
ヒアルロン酸は、皮ふを柔らかくしうるおいの膜で肌表面を保護する保湿成分です。
1gで約6Lの保水力を持つといわれており、肌表面で高い保湿効果を発揮します。
粘性が高く、配合化粧品の多くはトロリとした感触を持つのが魅力のひとつ。
しっとりと肌に吸い付く使用感が好みの方におすすめです。
ただ一口にヒアルロン酸といっても、保湿(浸透※1)できる範囲によって大きく3種類に分けられます。
種類 | 成分表示名 | 特徴 |
ヒアルロン酸 | ヒアルロン酸Na |
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スーパー ヒアルロン酸 | アセチル ヒアルロン酸Na |
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浸透型 ヒアルロン酸 (低分子ヒアルロン酸) | 加水分解 ヒアルロン酸 |
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一般的なヒアルロン酸は、肌表面を保護することを目的に配合されます。
肌をやわらかくしてくれるので、肌のごわつき改善を期待できるでしょう。
乾燥肌対策なら、スーパーヒアルロン酸や浸透型ヒアルロン酸をチェック。
特に加水分解ヒアルロン酸は肌の水分量を増やしてキープすることで、しっとりした肌触りに導いてくれるでしょう。
肌への効果や目的に合わせて使い分けてみてください。
コラーゲン
コラーゲンは、うるおいの膜で肌表面を保護する保湿成分。
主に肌の水分蒸発の防止や水分保持のために配合されています。
化粧水や美容液で取り入れるのがおすすめです。
コラーゲンは、保湿(浸透※1)できる範囲によって大きく3種類に分けられます。
種類 | 成分表示名 | 特徴 |
アテロ コラーゲン (生コラーゲン) |
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コラーゲン ペプチド (低分子、浸透型コラーゲン) |
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サクシノイル アテロ コラーゲン |
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特に市販化粧品に配合されていることが多いのが、「水溶性コラーゲン」「加水分解コラーゲン」。
水溶性コラーゲンは粘性が高くとろみがあるのが特徴で、肌のごわつき改善におすすめです。
加水分解コラーゲンは、粘性は少なくサラッとした使用感。
しかし、水溶性コラーゲンより水分保持効果が期待できるので、乾燥対策に向いています。
目的や使用感の好みで選ぶといいでしょう。
セラミド
セラミドは、肌のバリア機能を高める保湿成分です。
肌内部の水分蒸散や外部刺激から守り、水分をしっかりとキープ。
油性成分でありながら水ともよくなじみ、細胞のすき間を埋めるような効果が期待できます。
顏のベタつきとごわつきを同時に感じる、インナードライの方におすすめの成分です。
セラミドは由来別に4種類に分けられます。
種類 | 成分表示名 | 特徴 |
ヒト型 セラミド (バイオセラミド) |
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天然 セラミド |
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合成 セラミド (擬似セラミド) |
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植物性 セラミド (糖セラミド) |
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中でも、ヒト型セラミドは特に効果が高いといわれている種類。
セラミドの中ではやや高価なため、効果を重視したい方にぴったりの成分です。
まずは手軽にセラミドを取り入れたい方には、比較的安価な合成セラミドをおすすめします。
それぞれの特性を生かし、複数種類を組み合わせて取り入れるのが理想的でしょう。
成分表示に「セラミド」と記載されていないことも多いので、上記を参考にチェックしてみてください。
下記の成分もセラミドと似た働きをもっています。
成分表示を見てチェックしてみてください。
- レシチン(大豆リン脂質、卵黄レシチン)
→リン脂質を主成分とし、肌になじみやすく水分をしっかりとキープする - スフィンゴ脂質(スフィンゴ糖脂質)
→セラミドのもととなる脂肪群 - リピジュア(ポリクオタニウム-51)
→リン脂質がモデルにつくられ、保水力はヒアルロン酸の2倍 など
スクワラン
スクワランは、肌表面からの水分蒸散を防いでうるおいを保つ保湿成分です。
肌から分泌される汗や皮脂と混ざることで皮脂膜となり、肌表面を保護。
乾燥や紫外線などの外的刺激から肌を守ったり、表面をなめらかに整えたりする効果があります。
酸化しにくく、皮ふ刺激がほとんどないのが特徴。
さらに浸透性※1がよく、ベタつきのないサラッとしたテクスチャーで使いやすいでしょう。
もともとは、深海ザメの肝油から得られるスクアレン(スクワレン)が原料のものが主流でした。
現在は、植物由来や合成のものも化粧品に配合されています。
- 植物性スクワラン:オリーブ果実油、コメヌカ油など植物油由来
- シュガースクワラン:サトウキビ糖液由来
- 合成スクワラン:イソプレン(合成ゴムなどの原料)由来
成分表示には「スクワラン」と記載されていない場合があるので、上記を参考にしてください。
保湿剤として有名なワセリンは、スクワランと似た働きを持つ保湿成分。
スクワランと同じ肌表面に留まる性質なため、スキンケアの仕上げや保湿クリームとして使うのがおすすめです。
ホホバオイル(ワックスエステル)
ホホバオイルは、肌表面の水分蒸散と肌荒れを防ぎ、うるおいを保つ保湿成分。
肌に不足している皮脂を補って、水分や栄養分を閉じ込めるフタの役割をしてくれます。
皮脂を構成するワックスエステルが主成分で、ビタミンやアミノ酸、ミネラルが豊富。
保湿ケアだけでなく、美肌ケアも同時にできるでしょう。
さらに抗炎症作用もあり、ニキビなどの赤みを鎮める効果も期待できます。
油脂でありながらニキビの原因になりにくいので、肌質を選ばずに取り入れやすい成分です。
成分表示には、ホホバ種子油、ホホバ油と記載されているのでチェックしてください。
ホホバオイルは、精製の有無によって大きく2種類に分けられます。
- 未精製:ゴールデンホホバオイル(黄色)
→美容成分がそのまま含まれているため、肌が弱い方は刺激を感じる可能性がある - 精製:クリアホホバオイル(無色透明)
→精製されて不純物が取り除かれているため、敏感肌の方も使いやすい
肌質や求める効果に合わせて選びましょう。
よく似ているといわれるホホバオイルとアルガンオイルですが、違いは保湿効果の仕組みにあります。
アルガンオイルは、水分の浸透※1を促す作用がある成分。
ホホバオイルはスキンケア最後、アルガンオイルはスキンケア前のブースターなどと使い分けるのがおすすめです。
【肌質・求める効果別】おすすめ保湿成分
保湿効果をより実感したいなら、肌質や悩み、求める効果に合わせて保湿成分を選ぶのが大切。
カテゴリ別におすすめの保湿成分を紹介しているので、市販品を購入するときは参考にしてみてください。
※タップ、スクロールで該当箇所に移動します。
乾燥肌/敏感肌向け
乾燥肌や敏感肌は、保水力の高い保湿成分を取り入れることが大切。
外的刺激に敏感な肌を守り、肌自身がうるおいを保つ力を高められます。
保水力の高い保湿成分で、肌のバリア機能をサポートしましょう。
成分名 | 成分表示例 | 効果/特徴 |
プロテオグリカン | 水溶性プロテオグリカン |
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ライスパワーエキスNo.11 (ライスパワーNo.11、米エキスNo.11) | ライスパワーNo.11、米エキスNo.11 |
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ヘパリン類似物質 | ヘパリン類似物質 |
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ライスパワーエキスNo.11、ヘパリン類似物質は、医薬部外品にも配合される有効成分。
ドラッグストアでも手に入りやすいので、ぜひチェックしてみてください。
肌が刺激を受けやすい状態の時は、下記の成分を避けるとベターでしょう。
- PG(プロビレングリコール)
→他の化粧品基剤成分※との組み合わせで刺激を生じる可能性がある
※化粧品の土台(ベース)となる成分 - DPG(ジプロピレングリコール)
→目や肌への刺激を感じる可能性がある
脂性肌/ニキビ向け
オイリー肌やニキビ肌は、肌の保水力を高める保湿成分とニキビと相性の良い油分に注目するのがポイント。
しっかりと保湿することで、乾燥による皮脂の過剰分泌やニキビを防げます。
成分名 | 成分表示例 | 効果/特徴 |
BG (ブチレングリコール) | 1,3-ブチレングリコール |
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アロエ葉ベラエキス | アロエベラ液汁 |
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ローズヒップオイル | ローズヒップ油、カニナバラ果実油 |
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また、ニキビができやすい肌状態の方は、オレイン酸の含有量が少ないものを選ぶのようにしましょう。
ニキビの原因菌であるアクネ菌のエサになりやすいので注意してください。
ローズヒップオイルはオレイン酸含有量が約14%と非常に低いため、ニキビ肌のスキンケアにおすすめです。
ニキビ肌の方は、下記の成分を避けるとベターでしょう。
- 椿油、オリーブオイル、アボガドオイル 、アルガンオイルなど
→オレイン酸含有量が多い(ニキビの原因菌であるアクネ菌のエサになりやすい) - グリセリン(多価アルコール)
→ニキビの原因菌であるアクネ菌の増殖を促す可能性がある
年齢肌/エイジングケア向け
年齢肌のエイジングケア※2には、ハリや弾力、美白※3にアプローチする保湿成分がおすすめ。
肌のバリア機能やターンオーバーを整えて、肌細胞を活性化させる効果を期待できます。
成分名 | 成分表示例 | 効果/特徴 |
プラセンタ | プラセンタエキス |
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ヒト肝細胞培養液 | ヒト脂肪細胞順化培養液エキス |
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ナールスゲン | カルボキシメチルフェニルアミノカルボキシプロピルホスホン酸メチル |
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特にプラセンタエキスは肌のうるおい、ハリや弾力、透明感などが期待できる成分。
配合されている化粧品も比較的多いので、ぜひチェックしてみてください。
ブースターや美容液を選んで、普段の保湿ケアと組み合わせるのがおすすめです。
健やかな肌を保つには、保湿成分で肌の水分や油分を補うことが重要。
肌のバリア機能を保つ保湿因子に近い成分を取り入れると効果が実感しやすいでしょう。
保湿成分の効果やはたらきを把握して使い分けるのが、上手に保湿ケアをするコツです。
【水分をつかむ保湿成分】
【水分をかかえこむ保湿成分】 【水分をはさみこむ保湿成分】 【水分にフタをする保湿成分】
さらに肌質や悩みに応じて、成分をチェックしてみるのもおすすめです。
自分に合った保湿成分を取り入れて、毎日のケアで美肌をつくっていきましょう。